事業承継・引継ぎ補助金の制度概要と申請対策【2024年度】

2024年度も事業承継・引継ぎ補助金の制度が継続されており、事業承継やM&Aを通じた経営革新に対して最大600万円の支援が受けられる仕組みとなっています。なお、2024年7月に受付された第10次公募はすでに終了しており、現在は次回の公募に向けた準備段階です。

本記事では、補助金の基本的な枠組み、支援内容、申請の流れ、制度活用のポイントなどを整理し、今後の申請を検討する中小企業の経営者にとって実務に役立つ情報を詳しく解説します。

事業承継・引継ぎ補助金とは何か

中小企業の承継課題に対応するための国の支援制度

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業や小規模事業者が事業再編や経営資源の引継ぎを行いながら、経営革新を図るために必要な経費の一部を国が補助する制度です。親族内承継、M&A、第三者承継など多様な承継形態を支援し、企業の持続的成長や地域経済の活性化を目的としています。

制度の背景にある課題

現在、多くの中小企業経営者が60代後半から70代に達しており、後継者が不在のまま廃業に追い込まれるケースも増加傾向にあります。黒字経営であっても、後継者不在のために廃業を選択せざるを得ない状況も珍しくありません。そうした現状を踏まえ、この補助金は「事業を未来につなぐための支援策」として位置付けられています。

補助金の構成と支援内容の違いを理解する

事業承継・引継ぎ補助金は、企業の状況や目的に応じて次の3つの支援枠に分類されます。

経営革新枠|事業承継後の設備投資や新事業展開を支援

事業承継後に実施する経営革新(設備導入、新サービスの開始、市場拡大など)を支援する枠組みで、以下の3類型に分かれています。

創業支援類型の概要

廃業予定の事業者などから経営資源を引き継いで創業する場合が対象です。法人設立または個人事業の開業と、従業員・設備などの一体的な引継ぎが必要です。

経営者交代類型の要件

親族内承継や従業員による引継ぎを対象に、一定の知識や支援実績を有する後継者であることが求められます。

M&A類型における支援範囲

株式譲渡や事業譲渡などのM&Aによる承継が対象。対象者は特定創業支援事業の受講や認定市区町村からの支援を受けていることが条件です。

  • 補助率: 1/2または2/3
  • 補助上限: 最大600万円(賃上げ要件達成で最大800万円)
  • 併用加算: 廃業費との併用で最大+150万円加算

専門家活用枠|M&Aの外部支援費用を補助

事業承継やM&Aを円滑に進めるために必要な専門家(FA・仲介業者・デューデリジェンス等)の活用費用が対象です。類型は「買い手支援」「売り手支援」の2つに分かれます。

  • 補助率: 買い手支援=2/3、売り手支援=1/2または2/3
  • 補助上限: 最大600万円(未クロージング時は最大300万円)
  • 併用加算: 廃業費との併用で最大+150万円

廃業・再チャレンジ枠|一部廃業や再起に伴う費用を補助

M&Aや事業承継に伴う一部事業の廃業や、M&Aが不成立となり廃業を余儀なくされるケースでの再チャレンジのための支援です。

  • 対象経費: 原状回復費、在庫処分費等
  • 補助率: 1/2または2/3
  • 補助上限: 最大150万円

グループ申請制度の仕組みと活用方法

中小企業のグループ化で一体的な成長を図る

「グループ申請」は、親会社1社と最大4社の子会社が一体となって申請する制度です。M&Aを通じて中小企業をグループ化し、親会社の経営資源を子会社に展開することで、規模の拡大と生産性向上を目指す取り組みが支援されます。

  • 子会社化は申請時点で完了している必要あり
  • グループ全体での賃上げ実施が要件になる場合あり
  • 出資関係図・グループ一覧表の提出が必要

2024年実施の第10次公募はすでに終了

2024年に実施された第10次公募は、以下のスケジュールで行われ、すでにすべての手続きが終了しています。

  • 申請期間: 2024年7月1日~7月31日(終了)
  • 交付決定: 2024年8月下旬~9月初旬
  • 事業実施期間: ~2024年11月22日
  • 実績報告期限: 2024年11月25日
  • 補助金交付予定: 2024年12月中旬以降

この公募では「専門家活用枠」のみが対象となっており、「経営革新枠」や「廃業・再チャレンジ枠」は募集対象外でした。

申請の準備とスムーズな手続きのポイント

jGrantsを使ったオンライン申請が必須

申請には、国の電子申請システム「jGrants」の利用が必要です。利用には「gBizIDプライム」の事前取得が不可欠で、取得には1〜3週間程度かかります。早めの準備が重要です。

主な必要書類(法人の場合)

  • 履歴事項全部証明書
  • 閉鎖事項全部証明書
  • その他、補助事業に関する事業計画書や見積書等

補助事業計画の作成が採択の鍵

申請時には、補助事業の内容、進行体制、資金計画、期待される成果などを盛り込んだ詳細な事業計画が求められます。形式的な書類ではなく、実行性のある内容が高く評価されます。

減点制度に関する注意点(2023年度以降の変更)

2023年度以降の公募では、過去18ヶ月間に他の補助金で賃上げ加点要件を満たしていなかった場合、減点対象となる制度が導入されています。対象となる補助金には以下のものが含まれます。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業再構築補助金 など

過去の申請履歴と賃上げ要件の達成状況を確認しておきましょう。

採択率の傾向と分析

直近の公募では、専門家活用枠における採択率が60%前後で安定しています。廃業・再チャレンジ枠は併用申請が多く、単独申請の採択率は比較的低めです。

公募回経営革新枠専門家活用枠廃業・再チャレンジ枠
第9次60.0%62.5%56.0%
第10次61.4%37.5%(併用のみ)

関連制度|税制優遇措置も併せて活用

事業承継税制の特例承継計画提出期限が延長

事業承継税制では、2026年3月末までに特例承継計画を提出することで、自社株贈与に伴う税負担が最大で全額猶予・免除されます。承継行為自体は2027年12月末までに完了する必要があります。

経営資源集約化税制の拡充

M&Aに伴うリスクに備えた損失準備金制度が3年延長され、積立率や据置期間の緩和など、より柔軟な対応が可能になりました。

まとめ|将来を見据えた事業承継戦略に補助金を活用

事業承継・引継ぎ補助金は、後継者不足や世代交代の課題を乗り越えるための現実的な支援策として、多くの中小企業にとって大きなチャンスです。

特にM&Aや経営革新を視野に入れる企業にとっては、戦略的な一歩となる制度といえるでしょう。今後の公募に備え、gBizIDの取得や事業計画の準備を進めておくことが、スムーズな申請と採択のカギとなります。

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