コロナ禍により経営が厳しくなった中小企業を支援するため、経済産業省は金融庁・財務省と連携し、「中小企業活性化パッケージ」を策定しました。
本記事では、コロナ資金繰り支援の継続策や、収益力改善・事業再生・再チャレンジを促進するための施策について、11の柱に沿って詳しく解説します。
コロナ禍で中小企業が直面した経営課題と支援の必要性
新型コロナウイルスの感染拡大は、特に中小企業に深刻な影響を与えました。2020年度には対人サービス業を中心に売上が大幅に減少し、経常赤字に転落する企業も増えました。しかし、2021年度にかけて製造業やサービス業を中心に徐々に回復の兆しが見え始めます。
その背景には、政府や自治体による資金繰り支援や給付金、ゼロゼロ融資の効果もありました。実際、2021年上半期の倒産件数は過去50年間で2番目に少ない水準となっています。こうした状況を踏まえ、支援策をさらに強化するために「中小企業活性化パッケージ」が打ち出されました。
中小企業活性化パッケージの基本方針と特徴
中小企業活性化パッケージは、コロナ禍による債務負担や収益悪化に直面する中小企業を対象に、資金繰り支援だけでなく、再生や再挑戦を支える包括的な施策が整備されています。
大きく11の柱に分かれており、それぞれが企業の置かれたフェーズに応じた支援を提供します。
コロナ対応の資金繰り支援策の延長と強化
セーフティネット保証4号の延長と概要
売上が前年同月比で20%以上減少した中小企業に対し、信用保証協会が100%保証するセーフティネット保証4号の適用期限は、当初2022年3月までの予定でしたが、感染状況に対応して6月まで延長されました。この措置により、より多くの事業者が資金調達を円滑に行える体制が整えられました。
実質無利子・無担保融資のさらなる延長
コロナ禍で経営悪化に直面した事業者を対象に、実質無利子・無担保で融資を行う制度は、当初の15年返済期間から20年に延長されたうえで、2022年6月末までの申請受付が続行されました。
資本性劣後ローンの継続による資本強化支援
日本政策金融公庫が提供する資本性劣後ローンも、企業の自己資本強化を支援するため、来年度末まで継続されることが決定しました。これにより、事業の成長や事業承継にも柔軟に対応できる資金調達手段が確保されました。
収益力改善に向けた伴走支援の強化
認定経営革新等支援機関による伴走型支援の強化
計画策定支援だけでなく、計画実行後のフォローアップを含めた「伴走支援」が重視されるようになりました。さらに、経営者保証の解除に向けた取組み支援も加わり、中小企業の財務基盤の健全化を後押しします。
中小企業活性化協議会による収益力改善支援
旧・再生支援協議会は「中小企業活性化協議会」として再編され、2022年4月から活動を開始しました。特例リスケジュール支援から、収益改善を重視する支援へと移行し、より実効性の高い支援体制が整えられています。
事業再生を目指す支援施策の具体策
中小企業版私的整理ガイドラインの策定
事業再生を円滑に進めるため、「中小企業版事業再生等ガイドライン」が2022年4月15日に適用開始となりました。このガイドラインは、関係者間での共通理解を促進し、私的整理を透明かつ迅速に進める仕組みを整えています。
中小企業再生ファンドの拡充と支援対象拡大
コロナ禍で特に打撃を受けた宿泊・飲食業などを重点支援するため、ファンドの出資比率を最大80%に引き上げ、全国にファンドを設立する取り組みが進められました。
再生企業向け補助金制度の強化
事業再構築補助金に「回復・再生応援枠」が創設され、補助率が通常より高く設定されました。また、ものづくり補助金でも、再生企業に対して補助率引き上げや審査加点措置が行われています。
再チャレンジ支援で新たなスタートを後押し
個人破産回避に向けた保証債務整理支援
中小企業経営者の廃業時、個人破産を回避するための対応指針が強化されました。保証債務整理について金融機関に誠実な対応を求めることで、再チャレンジへのハードルを下げています。
廃業後の再チャレンジ支援体制の拡大
廃業後も再び起業に挑戦できるよう、中小企業基盤整備機構の人材支援事業が拡大されました。さらに、日本政策金融公庫による再チャレンジ向け融資制度も、運転資金の返済期間が15年まで延長されるなど支援が強化されています。
中小企業支援体制の一元化で支援の質を向上
全国の中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターを統合し、「中小企業活性化協議会」が設立されました。この新組織は専門家人材を増強し、地域金融機関との連携も深めながら、収益改善から再チャレンジまで一貫して支援する体制を築いています。
まとめ
「中小企業活性化パッケージ」は、単なる資金繰り支援にとどまらず、企業の収益改善や事業再生、経営者の再挑戦まで支える総合的な施策です。厳しい環境下にある中小企業にとって、これらの支援策を活用し、ポストコロナ時代に向けた成長戦略を描くことが求められます。
それぞれの支援制度の内容や利用条件をしっかりと確認し、自社に最適な支援を選び抜くことが、厳しい局面を乗り越えるカギとなるでしょう。