事業再構築補助金に新たに加わった「産業構造転換枠」は、国内市場の縮小や産業構造の変化により、既存事業からの転換を余儀なくされる事業者を支援する制度です。この枠では、廃業を伴う場合に最大2,000万円の廃業費が補助対象となる点が大きな特徴です。
本記事では、この産業構造転換枠の内容や申請要件、補助対象経費、活用時のポイントを詳しく解説します。
産業構造転換枠とはどのような制度か
市場環境の変化に対応する事業者支援
近年、少子高齢化や需要の多様化、輸出入の変動などにより、国内市場が縮小傾向にある業種・業態が増えています。こうした状況下で、従来の事業だけでは経営の維持が難しくなっている企業も多く、国はそのような事業者の再出発を後押しするため、「産業構造転換枠」を設けました。
この制度は、既存事業を廃止し、新たな事業に転換する企業に対して、事業再構築のための設備投資などに加え、廃業にかかる費用までも補助対象としています。
補助金額と補助率の詳細について
従業員規模に応じた補助上限額
補助金額は企業の規模に応じて設定されています。以下のように、従業員数が多いほど上限額が高くなります。
| 従業員数 | 補助金額(廃業費を除く) |
|---|---|
| 20人以下 | 100万円〜2,000万円 |
| 21〜50人 | 100万円〜4,000万円 |
| 51〜100人 | 100万円〜5,000万円 |
| 101人以上 | 100万円〜7,000万円 |
さらに、廃業を伴う場合は、最大2,000万円まで廃業費が上乗せされます。
補助率の違いに注意
企業の規模により補助率も異なります。
- 中小企業者:補助対象経費の2/3まで補助
- 中堅企業等:補助対象経費の1/2まで補助
この違いにより、自己負担割合が変わるため、事前にしっかり確認しておく必要があります。
申請時に求められる条件と注意点
全申請者共通の基本要件
どの類型でも共通する要件は以下の2点です。
- 経済産業省が定める「事業再構築指針」に基づいた3〜5年の事業計画を策定し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること
- 補助事業終了後3〜5年で、付加価値額(または従業員1人あたり付加価値額)を年平均3.0%以上増加させる見込みがあること
産業構造転換枠に特有の要件
さらに、以下のような独自要件が追加されます。
- 市場縮小要件:現在の主力事業が、過去または今後10年間で市場規模が10%以上縮小する業種であること
- 転換要件:当該業種から別の業種へ事業を転換すること
- 別事業要件・能力評価要件:過去に同補助金を受けた事業者が再申請する場合は、新規性や経営資源の確保が求められる
対象となる事業者の定義と条件
中小企業者と中堅企業等の範囲
補助対象となるのは、日本国内に本社を持ち、次のいずれかに該当する事業者です。
- 中小企業者等:中小企業基本法に該当する法人や各種協同組合など
- 中堅企業等:資本金10億円未満または常時雇用者2,000人以下の法人など
ただし、大企業が実質的に経営支配しているとみなされる企業(みなし大企業)など、一部は対象外となります。
補助対象となる具体的な経費
設備投資から人材育成費まで幅広く対応
補助の対象となる経費には以下のようなものがあります。
- 建物費:新築・改修・移転に伴う費用
- 機械装置費:新規導入や更新のための設備費
- ソフトウェア・システム費:業務効率化や事業転換に必要なシステム導入費
- 広告宣伝費:製品・サービスのプロモーションに必要な広告制作費や展示会出展費用
- 外注費・専門家費用:デザイン設計、技術指導などを外部委託する場合の費用
- 研修費:従業員のスキル向上に向けた教育訓練費(補助対象経費の1/3まで)
廃業費の詳細と活用のポイント
「産業構造転換枠」最大の特徴が廃業費の補助対象化です。以下の費用が対象となります。
- 廃止手続にかかる司法書士・行政書士等の費用
- 建物や設備の解体費用、原状回復費
- 借用設備のリース解約費
- 既存設備の移転・撤去費
補助上限は「補助対象経費の1/2または2,000万円」のいずれか少ない方です。なお、これらの経費は交付決定後に発注・支払いを行う必要があります。
申請方法と必要書類について
電子申請とGビズIDの取得が必須
申請はすべて電子申請システムで行われます。事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。IDは採択後の手続きにも使用されるため、申請者本人が管理する必要があります。
提出書類の一例
申請時に必要となる主な書類は以下の通りです。
- 事業計画書(A4で最大15ページ)
- 認定支援機関や金融機関の確認書
- 直近2期分の決算書や従業員数を示す書類
- 廃業費や市場縮小に関する説明資料(該当する場合)
スケジュールや申請時期に関する注意点
過去のスケジュールと今後の見通し
産業構造転換枠は第10回公募(2023年春)から新設され、6月末に応募を締め切り、8月〜9月頃に採択結果が公表されました。今後も類似の枠が再公募される可能性があるため、事業者は最新の情報をチェックし、自社の状況に合った枠の活用を検討すべきです。
産業構造転換枠を活用する際のポイント
廃業の判断は慎重に行う
この制度では廃業に対する補助があるとはいえ、既存事業を完全にやめることは経営上の大きな決断です。補助金ありきではなく、将来性のある新規事業の構想が明確になっていることが前提です。
認定支援機関との連携が成功の鍵
事業計画書は認定支援機関の確認が必要です。申請に慣れた専門家と早めに連携を取り、計画の実現可能性や収益性を十分に練り上げることが、採択率を高めるポイントとなります。
まとめ
産業構造転換枠は、市場環境の変化に柔軟に対応しようとする事業者にとって、力強い支援制度です。特に、廃業に関わる費用まで補助対象となることで、事業の転換にともなう経済的負担を大きく軽減できます。
従来の補助金制度ではカバーできなかった撤退のフェーズまで含めて支援が行われるため、本気で事業を再構築したい企業にとっては、チャンスとも言える制度です。今後の公募情報を見逃さず、企業の新たな成長に向けて前向きな一歩を踏み出しましょう。

