政府は令和3年11月に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」として補正予算を編成し、中小企業支援を大幅に強化しました。特に「事業復活支援金」や、グリーン・デジタル分野対応の特別枠を新設した各種補助金が注目を集めています。IT導入補助金ではPC購入が補助対象に加わるなど、支援の幅も大きく広がっています。
本記事では、令和3年度補正予算による中小企業向け支援施策を整理してわかりやすく解説します。
令和3年度補正予算における中小企業向け支援の特徴
令和3年度補正予算のうち、5兆4,290億円のうち3兆8,594億円が中小企業関連に充てられました。コロナ禍で売上が落ち込んだ事業者への「事業復活支援金」を中心に、事業再構築補助金や生産性向上補助金、IT導入補助金の拡充が盛り込まれ、過去にない規模と内容の支援策となっています。
事業復活支援金でコロナ影響を受けた事業者を直接支援
事業復活支援金の対象要件と給付内容
事業復活支援金は、コロナの影響により2021年11月から2022年3月の間に売上が減少した中小企業、小規模事業者、個人事業主を対象に支給されました。売上減少率に応じて、5か月分の売上減少額を基準に一括給付され、上限は最大250万円に設定されています。
対象条件は、売上高が前年または前々年同月比で30%以上減少していることが求められました。50%以上減少した場合は上限額が高く設定され、30〜50%の減少事業者はその6割となる仕組みでした。
申請受付と終了時期について
事業復活支援金の申請受付は、補正予算成立後にスタートし、2022年春までに締め切られました。すでに受付は終了していますが、同様の支援金制度が今後も新たに設けられる可能性があるため、動向には注目が必要です。
事業再構築補助金に特別枠を新設し支援を拡充
売上要件撤廃で申請しやすく
事業再構築補助金では、従来求められていた「売上5%以上減少」の条件が撤廃され、より多くの事業者がチャレンジできる制度に改正されました。対象は、2020年4月以降の6か月間で、任意の3か月合計売上が10%以上減少している事業者です。
グリーン分野への特化支援もスタート
グリーン分野に取り組む企業向けに、売上高減少要件なしで最大1億円の補助が受けられる特別枠が新設されました。省エネや脱炭素社会を目指す新規事業に取り組む企業には大きな後押しとなりました。
また、業況が厳しい事業者には、補助率3/4、最大1,500万円が支給される特別枠も新設され、事業再生を本格的に後押しする体制が整えられています。
生産性革命推進事業で中小企業の成長投資を後押し
ものづくり補助金にグリーン・デジタル特別枠を追加
「ものづくり補助金」では、通常枠に加えて、グリーン分野での設備投資に最大2,000万円、デジタル分野に最大1,250万円が補助される特別枠が創設されました。補助率は2/3と手厚く、成長分野への事業転換を図る中小企業にとって有利な条件となっています。
持続化補助金で賃上げや後継者支援にも対応
「持続化補助金」では、賃上げを行う事業者向け(成長・分配強化枠)、後継者による新たな取り組みを支援する枠(新陳代謝枠)、インボイス制度対応に向けた転換事業者向け(インボイス枠)が新設されました。補助率や上限額も引き上げられ、より積極的な取り組みが支援されます。
IT導入補助金でデジタル化をさらに加速
PCやタブレット購入も補助対象に拡大
従来のITツール導入支援に加え、PCやタブレット端末、レジ等のハードウェア購入も補助対象となりました。PCやタブレットは10万円、レジは20万円を上限に、補助率1/2で支援されます。
また、ITツールの導入支援では、最大50万円までは補助率3/4、50万〜350万円は補助率2/3とされ、導入負担が大幅に軽減される形となっています。
複数社連携型IT導入枠でデータ活用を推進
複数の中小企業が連携してITツールを導入する「複数社連携型IT導入枠」も新設されました。データ共有や受発注システムの統合など、サプライチェーン全体での効率化を目指すプロジェクトに対して支援が行われています。
資金繰り支援策も大幅に強化
実質無利子・無担保融資と劣後ローンの継続
資本性劣後ローンや、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資は、令和4年度も継続実施されました。新規貸付限度額の引き上げや据置期間の延長も行われ、長期的な資金調達に対応できる仕組みが整備されています。
セーフティネット保証の期限延長で安心感を確保
セーフティネット保証4号(100%保証)の期限も延長され、売上高20%以上減少した事業者に対して引き続き全額保証による融資支援が実施されています。
その他の関連施策で環境変化に対応
感染症対策と経済活動の両立を目指した「がんばろう商店街事業」では、感染リスクを抑えた需要喚起イベントの開催支援も行われました。また、燃料油価格変動対策事業や、データセンター地方拠点整備支援など、幅広い分野への投資が進められました。
まとめ
今回の令和3年度補正予算では、中小企業の資金繰り支援に加え、グリーン・デジタル分野への成長投資、デジタル化支援が総合的に進められました。
今後も新たな補助金・支援策の情報に注目し、積極的に活用することが事業拡大のカギとなるでしょう。