事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)は、中小企業のM&Aを支援し、事業再編や統合による成長促進を目的とする補助制度です。本記事では、補助対象となる条件や支援内容、申請手続きの流れまでを詳しく解説します。
M&Aを検討している中小企業や個人事業主にとって、経営資源の有効活用と成長戦略を後押しする有力な選択肢となるでしょう。
事業承継引継ぎ補助金専門家活用型の概要と背景
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)は、これまでの「事業承継補助金」と「経営資源引継ぎ補助金」を統合して創設されました。新型コロナウイルス感染症の影響も受け、経営者の年齢にかかわらず経営資源の散逸を防ぎ、生産性向上や地域経済活性化を図る必要性が高まった背景があります。
この補助金では、M&A支援会社や専門家に支払う費用の2分の1から3分の2を補助し、最大400万円の支援が受けられます。過去には2021年から公募が開始され、現在も同様の施策が続いていますが、当時のスケジュールは参考例として紹介します。
補助対象となる中小企業者と個人事業主の要件
補助金申請に必要な基本条件とは
補助対象となるのは、日本国内で事業を営む中小企業者や個人事業主です。さらに、以下の条件を満たすことが求められます。
- 反社会的勢力との関係がないこと
- 法令を遵守して事業を運営していること
- 経済産業省から指名停止措置を受けていないこと
- 事務局からの調査やアンケートに協力できること
- 補助対象事業に関する情報公開に同意できること
これらをクリアしなければ申請できないため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
経営資源引継ぎとはどのような事業か
買い手支援型とはシナジーを活かす取り組み
買い手支援型は、M&Aを通じて事業再編や統合を行い、取得した経営資源を活用して新たな経営革新を図る事業者が対象です。地域の雇用を守り、経済全体をけん引できる取り組みであることが求められます。
売り手支援型とは地域経済を守る引継ぎ
売り手支援型は、自社が有する経営資源を第三者に譲り渡し、事業を継続させる中小企業が対象です。こちらも地域の雇用維持や経済活性化に寄与する事業でなければなりません。
補助対象となる具体的な経費とその範囲
M&A支援会社への手数料や専門家報酬が対象
補助対象となる経費は、M&A支援業者への手数料や、デューデリジェンス(企業調査)などにかかる専門家報酬が中心です。
買い手支援型、売り手支援型ともに以下が対象となります。
- 謝金
- 旅費
- 外注費
- 委託費
- システム利用料
さらに売り手支援型では、廃業に伴う登記費用や解体費、在庫処分費用なども補助対象になります。
交付申請できないケースと注意点
M&Aの形態や関係性に注意が必要
交付申請が認められない代表例には次のようなものがあります。
- 承継後に議決権の過半数を取得しない場合
- 承継前から議決権の過半数を保持している場合
- 承継者と被承継者が同族関係者である場合
- 支配関係にある法人間での引継ぎ
- 実態が単なる不動産売買にとどまる場合
特に、単なる不動産の売買では事業譲渡とは認められず、補助対象外となるため注意が必要です。
補助金額や補助率の詳細
最大400万円まで支援される魅力的な内容
補助金の支援額と補助率は次の通りです。
- 【買い手支援型】上限400万円、下限50万円、補助率2/3以内
- 【売り手支援型】上限400万円(廃業費用は別途200万円まで加算可)、補助率2/3以内
これにより、実質的に最大600万円の支援が受けられる可能性もあります。
申請から補助金受領までの流れ
事前準備から交付までのスケジュールを確認
実際の2021年度公募では、以下の流れで手続きが進められました。
- gBizIDプライム取得
- jGrantsで交付申請
- 交付決定(2021年8月中旬予定だった)
- 補助対象事業の実施(交付決定日から2021年12月末まで)
- 実績報告(翌年1月中旬まで)
- 審査を経て補助金交付(翌年3月頃)
現在は当時の日程は終了していますが、同様の流れで最新スケジュールに合わせた対応が必要です。
必要書類と提出時のポイント
申請に必要な書類は、補助対象者の区分と引継ぎ形態によって異なります。主なものは以下です。
- 履歴事項全部証明書(発行後3か月以内)
- 確定申告書と決算書3期分
- 従業員の労働条件通知書
- 代表者の住民票
また、設立間もない法人の場合には、その旨を明記した書類提出も求められるため注意が必要です。
まとめ
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)は、M&Aによる経営資源の有効活用と事業再編を強力に後押しする補助制度です。
補助対象の条件や申請の流れをしっかりと把握し、必要な準備を整えれば、資金負担を抑えながらスムーズな事業承継が実現できるでしょう。申請時には、自社がどの類型に該当するかを確認し、適切な書類を整えることが成功のカギとなります。