令和4年度の「事業承継引継ぎ補助金」は、前年の令和3年度補正版と比べ、対象者の要件や補助率、上限額に大きな違いが見られます。特に、申請対象が広がった一方で、支援内容は一部縮小されています。
本記事では、支援枠ごとに具体的な変更点を整理し、申請にあたって押さえておきたいポイントを分かりやすくまとめます。
事業承継引継ぎ補助金とは中小企業の未来を支える制度
事業承継引継ぎ補助金は、経営資源の承継を支援することで、中小企業の持続的な成長を後押しする制度です。
近年、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響で、事業承継の遅れが深刻化しています。この状況を踏まえ、事業引継ぎを促進する取り組みが国を挙げて進められています。
令和4年度版と令和3年度補正版の主な違いを整理
対象者要件の見直しで申請しやすく
令和4年度版では、中小企業基本法上の中小企業・小規模事業者等であれば広く申請可能になりました。これに対し、令和3年度補正版は小規模企業者や売上減少など、追加的な要件を満たす必要がありました。対象範囲が広がったことで、より多くの事業者が活用できるようになっています。
対象事業に求められる要件の違い
令和4年度版は、経営革新を伴う新たな取り組みであれば対象となります。一方、令和3年度補正版ではデジタル化、グリーン化、事業再構築のいずれかに貢献することが求められていました。この点で、令和4年度版は柔軟性が高くなっています。
補助率と補助上限額の比較
令和4年度版の補助率は1/2以内、補助上限額は最大500万円(生産性向上要件を満たさない場合300万円)となっています。対して令和3年度補正版は補助率2/3以内、上限額600万円と手厚い支援でした。支援額は縮小していますが、申請のハードルは下がっています。
経営革新事業とはどのような支援か
経営革新事業の類型ごとの特徴
- 創業支援型(Ⅰ型):引き継いだ経営資源を活用して新たに創業する取り組み
- 経営者交代型(Ⅱ型):事業承継を機に経営革新に取り組む
- M&A型(Ⅲ型):事業再編や統合によって新たな事業を展開する
対象となる事業承継は2017年4月1日から2022年12月16日までに実施されたもので、すでに期間は終了しています。
補助対象経費の幅広さもポイント
対象となる経費には、人件費、設備投資費、原材料費、外注費、マーケティング費用、廃業に伴うコストなどが含まれ、多岐にわたります。
専門家活用事業でM&A支援を受ける仕組み
専門家活用事業の対象者と申請の流れ
登録FAや仲介業者の支援を受けた中小企業が対象となります。M&Aにおける買い手支援型と売り手支援型があり、両者それぞれに申請が可能です。
令和3年度補正版との違いを詳しく解説
令和3年度補正版では、小規模企業者や赤字企業に対する加点制度が設けられていましたが、令和4年度版ではこれが撤廃されています。また、補助率が1/2以内に引き下げられ、上限額も400万円に縮小されました。特に支援が薄くなった分、M&Aの準備段階から慎重に進めることが求められます。
廃業再チャレンジ事業で次の一歩を支援
単独申請と併用申請の違い
単独申請では、M&Aに失敗した場合の廃業とその後の再チャレンジを支援します。併用申請は、経営革新事業や専門家活用事業と合わせて申請し、事業の一部または全体の廃業に伴う費用を補助するものです。
再チャレンジ申請で求められる要件とは
2020年以降にM&Aに着手し、6か月以上取り組んだにもかかわらず譲渡に至らなかった場合が対象となります。再チャレンジとして、新たな法人設立や個人事業主としての再スタート、あるいは企業への就職などが求められます。
補助率の変化にも注意
令和3年度補正版では2/3の補助率だったものが、令和4年度版では1/2に引き下げられているため、自己負担額が増える点に留意が必要です。
令和4年度版と令和3年度補正版のスケジュールを比較
項目 | 令和4年度版 | 令和3年度補正版(第2回) |
---|---|---|
申請受付期間 | 2022年7月25日〜8月15日 | 2022年7月27日〜9月2日 |
交付決定時期 | 2022年9月中旬〜下旬 | 2022年10月中旬以降 |
事業実施期限 | 2022年12月16日まで | 2023年4月30日まで |
※すべて過去に終了しているスケジュールです。今後類似の補助金に応募する際は、最新の情報を必ず確認しましょう。
申請の流れと注意点
申請には「gBizIDプライム」のアカウント取得が必須となります。加えて、認定支援機関からの確認書の取得、必要書類の準備、オンライン申請システム「jGrants」での手続きが必要です。
ミスや漏れがあると申請が受理されないため、チェックリストを活用しながら慎重に進めましょう。
まとめ
今回は、事業承継引継ぎ補助金について令和4年度当初予算事業と令和3年度補正予算事業の違いを詳しく整理しました。令和4年度版では申請のハードルは低くなった一方で、補助率や上限額は縮小されています。
それぞれの補助金の特徴を理解し、自社に最も適したタイミングでしっかり準備を整えることが、スムーズな申請と成功への近道です。