補正予算の成立により、産業雇用安定助成金への新コース創設や賃上げ支援策の強化、ものづくり補助金の拡充など、中小企業や労働者支援に向けた制度が新たに整備されました。
本記事では、それぞれの支援策のポイントについて詳しく解説します。
産業雇用安定助成金に「スキルアップ支援コース」が新設
スキル向上と賃上げを支援する新たな枠組み
令和4年度第2次補正予算(2022年12月成立)により、産業雇用安定助成金が拡充されました。中でも注目されるのが、新たに創設された「スキルアップ支援コース(仮称)」です。
このコースでは、在籍型出向によって労働者が新たなスキルを身につけ、その結果として賃金が向上した場合に、企業がかかる費用の一部が助成されます。特に、技術革新が急速に進む現在、人材育成への投資は企業にとって重要なテーマとなっており、この支援策はその後押しとなるでしょう。
在籍型出向とは?メリットと支援の意義
在籍型出向とは、元の会社に籍を残したまま、別の企業や団体で一定期間働く形態です。これにより、従業員は新しい技術や知識を吸収でき、企業側も柔軟な人材育成が可能になります。今回のスキルアップ支援コースは、単なる雇用維持にとどまらず、労働者自身のキャリア形成と企業の競争力向上を同時に支援する施策といえるでしょう。
賃上げ促進を目指す税制優遇と補助金支援策
賃上げを実施する企業への優遇制度
政府は、令和4年度第2次補正予算の中で「構造的な賃上げ」を重視しました。物価上昇による生活負担を和らげるため、企業による継続的な賃上げを促す仕組みが導入されています。
具体的な支援策として、以下のような制度が整備されています。
- 中小企業向け賃上げ促進税制
- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)
これらの制度では、賃上げを行った企業に対して補助率や補助上限額が引き上げられるインセンティブが設けられており、積極的な活用が推奨されています。
賃上げ促進税制の具体的なメリット
賃上げ促進税制を利用すると、給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して法人税の減税措置が適用されます。特に中小企業にとっては、賃上げによるコスト増を緩和し、成長投資へとつなげるチャンスとなります。適用条件や申請方法については、最新の制度内容を確認することが重要です。
ものづくり補助金2023年版で新設された枠組み
ものづくり補助金の概要と対象企業
ものづくり補助金は、中小企業による新製品開発や生産プロセスの改善、設備投資などを支援するための代表的な制度です。生産性向上や付加価値創出を目指す企業に広く利用されてきました。
2023年版では、一般型とグローバル展開型に分類され、さらに一般型には以下の枠が設けられました。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
これらに加え、グローバル市場開拓枠が新設され、海外市場進出に向けた支援も強化されています。
新設「グローバル市場開拓枠」の特徴
グローバル市場開拓枠では、海外での販路開拓や現地法人設立、海外向け製品の開発などが支援対象となります。日本国内だけでなく、成長著しい海外市場への参入を検討する中小企業にとって、大きな後押しとなるでしょう。
また、グリーン枠では温室効果ガス排出量削減に取り組む度合いに応じ、補助金上限が最大で異なる三段階に設定されています。環境経営を進める企業には特に魅力的な内容です。
賃上げによる補助上限アップも実施中
さらに、賃上げを実施した企業については、補助金の上限額が最大1,000万円上乗せされる仕組みも用意されています。これにより、これまで資金不足から設備投資を断念していた中小企業でも、積極的なチャレンジがしやすくなっています。
まとめ:今後の補助金活用に向けたポイント
補助金や助成金は、国の経済対策や社会情勢に応じて頻繁に見直しや変更が行われます。今回紹介した支援策についても、今後内容が変わる可能性があるため、常に公式情報を確認することが重要です。
また、申請にあたっては、事業計画の策定や証拠書類の整備が求められます。早めに準備を進め、要件を正しく理解しておくことで、申請から採択までをスムーズに進めることができるでしょう。
支援策を効果的に活用することで、賃上げや生産性向上、新市場開拓といった経営課題への対応が加速します。特に中小企業にとっては、これらの制度をいかにうまく使いこなすかが、今後の成長を左右するといえます。