事業承継引継ぎ補助金第5次公募の変更点と申請ポイントまとめ

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の事業承継や再編、統合を支援するために必要な経費の一部を補助する制度です。令和4年度補正予算に基づく第5次公募では、補助対象や申請要件が大幅に見直され、より幅広い中小企業が活用しやすくなりました。

本記事では、第5次公募からの主な変更点と制度全体のポイントについて詳しく解説します。

事業承継引継ぎ補助金の基本的な仕組みを知っておこう

事業承継引継ぎ補助金は、次世代への事業承継や経営資源の引き継ぎを支援するために設けられた制度です。支援対象となる事業は、主に次の三つに分かれます。

  • 経営革新事業
  • 専門家活用事業
  • 廃業再チャレンジ事業

これらの事業では、事業承継に伴う経営革新やM&A支援、廃業にかかる原状回復費用の一部が補助されます。自社の状況に応じて、適切な事業への申請が求められます。

経営革新事業で加わった第5次公募からの重要な変更点

第5次公募(令和5年頃実施)では、より現実的な経営支援を目指した制度改正が行われました。

未来の承継も補助対象となり事前準備がしやすくなった

これまでは承継完了後のみが対象でしたが、5次公募からは承継前の準備段階も補助対象となる「未来の承継」という仕組みが新設されました。
対象となるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 後継者候補が対象企業に在籍している
  • 役員経験または継続勤務が3年以上ある
  • 承継完了予定日が5年以内である
  • 承継計画が認定支援機関の確認を受けている

これにより、後継者育成と経営基盤の強化が早期から図れるようになりました。

補助上限額と補助率が大幅に見直された

第5次公募では、次のような見直しが行われました。

  • 補助上限額が600万円から800万円に引き上げ
  • 通常は補助率1/2以内、一定条件を満たすと2/3以内に引き上げ
  • 賃上げ実施企業にはさらに優遇措置あり

特に賃上げによる上限引き上げは、従業員待遇改善を促す狙いがあります。

生産性向上要件が全申請者に義務付けられた

申請には、以下を満たす事業計画を作成することが求められます。

  • 補助事業期間とその後5年間で付加価値額または1人当たり付加価値額を年平均3%向上
  • 付加価値額とは営業利益、人件費、減価償却費の合計

この要件により、補助金活用後も企業の持続的成長が求められています。

専門家活用事業で変更された申請要件と注意点

専門家活用事業も、第5次公募から細かい条件が追加され、注意が必要になっています。

過去の補助金受給歴や関係者の制限が強化された

次のいずれかに該当する事業者は、申請できません。

  • 過去に経営資源引継ぎ補助金などの交付を受けた事業者
  • 登録M&A支援機関の関係者が申請企業の代表者等である場合

採択後に判明した場合、交付決定取り消しとなるため事前確認が必須です。

法人設立や個人事業開業年数に新基準が設けられた

申請時点で以下の条件を満たしている必要があります。

  • 法人:3期分の決算と申告が完了していること
  • 個人事業主:開業届および青色申告承認申請書の提出から5年以上経過

これにより、十分な経営実績を持つ事業者が対象となります。

経営資源引継ぎが未達成の場合の補助対象が限定された

M&Aが実現しなかった場合、原則として着手金や仲介費用は補助対象外となりました。
買い手支援型では、デューデリジェンス費用のみが対象となるケースが多くなります。

廃業再チャレンジ事業で支援される対象範囲も整理しておこう

廃業または事業撤退を行う際にも、原状回復費用などに対する補助が設けられています。

対象となるパターンは次のとおりです。

  • 会社全体の廃業(法人解散、在庫処分、設備解体など)
  • 事業の一部の廃業(特定事業のみ撤退、設備処分など)

経営革新事業または専門家活用事業と併用する場合は、廃業費用に最大150万円まで補助が加算され、より広範な支援を受けられます。

事業承継引継ぎ補助金の申請手続きは事前準備が重要

補助金申請は電子申請システムjGrantsを通じて行いますが、スムーズな申請には次の準備が必要です。

  • gBizIDプライムアカウントを取得(通常1〜2週間かかる)
  • 認定支援機関から確認書を取得
  • 必要な申請書類を整備
  • jGrants上で情報入力と書類添付を実施

特にgBizIDの取得には時間を要するため、早めの行動が推奨されます。

まとめ

第5次公募では、制度の柔軟化と支援対象拡大により、より多くの中小企業が補助金を活用できるようになりました。

未来の承継制度や賃上げ優遇策により、事業承継に向けた早期準備が後押しされています。

これまで対象外だった事業者も、最新の要件を確認し、自社に適した活用方法を検討しましょう。