政府は、2023年度補正予算案を総額13兆1272億円で編成し、エネルギー費用軽減策や国内産業強化策を盛り込みました。本記事では、そのうち経済産業省が担う分野に焦点を当て、予算規模4.5兆円の具体的な施策内容をまとめます。
物価高対策から中小企業支援、技術革新促進、地方経済活性化、国土強靱化に至るまで、5つの重点分野を軸に、今後の支援メニューや投資方針を解説します。
経済産業省 令和5年度補正予算案の概要
経済産業省が策定した補正予算案は、以下の5つの分野に重点配分されています。
- 物価高から国民生活を守る措置
- 地方・中小企業支援
- 成長力強化に資する国内投資促進
- 社会変革の推進
- 国土強靱化と国民の安全確保
各施策は、持続可能な経済成長と生活基盤の安定化を目指しています。
燃料油・電気ガス価格高騰に対応する支援策
燃料油価格激変緩和とエネルギー負担軽減
急激なエネルギー価格の高騰に対応するため、燃料油と電気・ガス価格の負担軽減策が講じられました。これらの支援措置は、2024年4月末まで継続されました(※すでに終了)。
主な事業内容は次の通りです。
- 燃料油価格激変緩和対策事業:卸価格の抑制によりガソリン等の小売価格急騰を防止。
- 電気・ガス価格激変緩和対策事業:電気料金やガス料金の一時的な値下げ支援を実施。
- LPガス配送合理化支援:効率化設備の導入支援により物流コストの低減を目指しました。
これにより、企業・家庭双方の経済的負担を一時的に緩和することができました。
省エネルギー投資と脱炭素社会への移行促進
長期的には、エネルギーコスト削減と脱炭素化を両立するため、以下の施策も推進されています。
- 省エネ型設備導入支援(2025億円)
- クリーンエネルギー自動車購入補助(1291億円)
- 高効率給湯器導入支援(580億円)
これらの支援により、企業や家庭のエネルギー使用効率の向上と、環境負荷の低減が図られています。
地方・中小企業向け成長促進支援策の拡充
省力化投資で賃上げと成長を実現
中小企業の持続的成長を目指し、次のような新たな補助金制度が設けられました。
- 大規模成長投資補助金(最大50億円補助)
- 省力化投資カタログ支援(最大1500万円補助)
中堅・中小企業の賃上げ支援を明確に掲げ、人手不足や生産性向上といった課題に同時対応する設計となっています。
生産性革命推進事業による設備・IT導入支援
生産性向上のためには、従来型の業務からの脱却が不可欠です。そこで、
- ものづくり補助金(最大1億円)
- IT導入補助金(インボイス対応強化)
- 事業承継支援
といった各種支援策が用意されています。これにより、デジタル技術の導入促進と、事業の世代交代を後押ししています。
国内投資拡大と先端技術開発への注力
半導体・生成AI・量子技術への集中投資
成長のカギを握るのが次世代技術です。特に重点が置かれている分野は以下です。
- 重要物資サプライチェーン強靱化支援(9147億円)
- ポスト5G基盤強化(6778億円)
- 先端半導体国内生産支援(6322億円)
さらに、生成AI開発支援(1856億円)と量子融合技術支援(300億円)にも注力し、世界的な技術競争に対応する体制強化が進められています。
人口減少を力に変える社会変革推進施策
自動運転・デジタルインフラ整備で地方活性化
労働力不足への対策として、自動運転技術の社会実装とデジタルインフラの整備が進められています。
- 自動運転デジタルライフライン整備(132億円)
- 無人自動運転開発支援(27億円)
これにより、地方の物流や交通インフラを支え、人口減少社会に適応する新しい生活圏作りが目指されています。
サイバーセキュリティ対策も強化
産業界全体のデジタル化進展に対応するため、産業サイバーセキュリティ環境整備事業(5.1億円)も強化されました。これにより、サイバー攻撃リスクを抑え、企業活動の安定化を図ります。
国土強靱化と防災・減災対策の推進
災害からの早期復興とエネルギー強靱化
災害リスクが高まる中、復興支援と災害対応インフラの整備が重要視されています。
- なりわい再建支援事業(45億円)
- 災害対応型エネルギーインフラ整備支援(90億円)
- 廃炉・汚染水処理支援(175億円)
さらに、国際的な復興支援として、ウクライナ支援にも260億円が充てられ、日本の国際貢献姿勢を示しています。
まとめ
2023年度経済産業省補正予算案は、総額4.5兆円規模で国民生活の安定、地方・中小企業の成長促進、先端技術開発支援、社会変革推進、国土強靱化に幅広く対応しています。
物価高騰対策、省エネルギー化、中小企業支援策、先端分野への投資拡大がバランスよく組み込まれており、日本経済の持続可能な成長を支える土台となることが期待されます。
各企業や事業者にとって、この機会を最大限に活かすことが今後の成長戦略に直結するでしょう。