事業再構築補助金は、経済の構造転換やコロナ後の経営環境の変化に対応する中小企業などを支援する制度です。第10回公募では、制度全体の枠組みが大きく見直され、補助類型の増加や要件の緩和など、幅広い事業者にとって申請しやすい内容に変わりました。
本記事では、補助金の基本的な概要とともに、第10回で導入された変更点や新たに加わった支援枠について詳しく解説します。
事業再構築補助金とは何か
新たな市場や業態への挑戦を支援する制度
事業再構築補助金は、これまでの事業とは異なる新分野への展開や業態の転換、製造の国内回帰といった構造的な変革を行う中小企業・中堅企業を対象とした補助制度です。経済の構造変化や感染症の影響により、既存のビジネスモデルの見直しが求められるなかで、思い切った転換に取り組む企業を後押しする目的で設けられています。
対象となる取り組みの例
補助の対象となる事業再構築の類型は以下の5つです。
- 新市場進出(新分野展開・業態転換)
- 事業転換
- 業種転換
- 事業再編
- 国内回帰(海外生産の国内移転など)
いずれかに該当する事業計画を、認定経営革新等支援機関の確認を受けた上で策定する必要があります。
補助対象となる経費の種類
事業再構築補助金で認められている補助対象経費には、主に以下のような項目が含まれます。
- 建物費(建築・改修費など)
- 機械装置やシステムの構築費
- 技術導入費(知的財産などの導入)
- 外注費(設計や加工業務など)
- 広告宣伝費・販売促進費(展示会出展費用など)
- 研修費(従業員の教育訓練費など)
なお、「サプライチェーン強靱化枠」に限っては、建物費と機械装置・システム構築費のみが対象となる点に注意が必要です。
補助額と補助率の基本構造
補助金額は事業類型と従業員規模で決まる
補助金額は100万円から最大5億円までと、申請する枠や従業員の規模により幅があります。たとえば、「最低賃金枠」は比較的小規模な取り組みに対応し、「サプライチェーン強靱化枠」は大規模投資に対して最大5億円の補助が受けられます。
類型別の補助率の違い
中小企業は基本的に1/2〜3/4、中堅企業は1/3〜2/3の補助率が適用されます。賃上げや再生計画などの追加要件を満たすことで、より高い補助率が認められる場合もあります。
第10回公募で追加された新枠と制度変更のポイント
令和4年度補正予算に基づき実施された第10回公募では、これまでの「通常枠」が廃止され、新たな枠が複数創設されました。以下、主な変更点と新設枠を解説します。
成長枠の新設と売上減少要件の撤廃
成長分野に大胆に挑戦する事業者向けに新たに創設されたのが「成長枠」です。従来の「通常枠」は廃止され、この枠が主な基本類型となりました。
成長枠の要件
- 対象市場が今後10年間で10%以上成長すると見込まれる業種に属している
- 補助事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率2%以上増加させる
売上減少要件がなくなったことで、コロナ禍の直接的影響が薄れた現在でも、事業の成長性が評価されれば申請が可能となっています。
グリーン成長枠にエントリー類型が追加
カーボンニュートラルなどの環境関連分野に取り組む企業向けに「グリーン成長枠」が継続され、新たに要件を緩和した「エントリー類型」が加わりました。
グリーン成長枠の要件(エントリー/スタンダード)
- 対象分野に関する技術開発・人材育成を行う
- 従業員の一定割合に対して、年間20時間以上の研修を実施
- 給与支給総額を年率2%以上増加させる
エントリー類型は、技術開発の期間や人材育成の対象人数が緩和されており、より取り組みやすい内容となっています。
卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠の新設
事業規模の拡大や継続的な賃上げを目指す事業者に対して、成長枠・グリーン成長枠の上乗せとして追加申請できる枠が用意されました。
- 卒業促進枠:中小から中堅企業への転換を図る事業者向け
- 大規模賃金引上促進枠:一定の賃上げを達成した場合に補助率が引き上がる
これらの枠は、同時申請が必要であり、両方を併用することはできません。
新たに創設された重点支援枠の概要
産業構造転換枠で構造的課題に対応
市場が縮小傾向にある業種や、地域の基幹企業が撤退する影響を受ける地域の事業者を対象に、「産業構造転換枠」が新設されました。
対象条件の例
- 過去〜今後10年間で市場規模が10%以上縮小する業種に該当
- 地域内で主要企業の撤退により大きな経済損失が見込まれる場合
廃業費が補助対象に追加され、最大2,000万円の上乗せが可能です。
サプライチェーン強靱化枠で国内回帰を支援
生産拠点の国内回帰を推進する企業を対象に、最大5億円の補助が認められる「サプライチェーン強靱化枠」も新設されました。
申請要件が複雑なため注意
この枠では、以下のような追加要件をすべて満たす必要があります。
- 国内での生産要請を受けていること
- DX自己診断およびセキュリティ対応の宣言済み
- 設備投資先の賃金水準が地域別最低賃金より30円以上高いこと
- 給与支給総額の年率2%以上の増加計画
- パートナーシップ構築宣言の公表
高度な設備投資や経営改革を伴う企業向けに設計されています。
業況が厳しい事業者向けの再編枠も継続
従来の「回復応援枠」と「緊急対策枠」は統合され、「物価高騰対策・回復再生応援枠」として継続されます。コロナや原材料高騰の影響を受けた事業者を対象としています。
主な要件
- 過去一定期間の売上が、2019〜2021年と比較して10%以上減少
- 中小企業活性化協議会等の支援を受けた再生計画の策定済み
申請制度や公募スケジュールの変更点
一部の申請類型で複数回採択が可能に
第10回から、「グリーン成長枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靱化枠」に限り、過去に採択された事業者でも再度の申請が可能となりました。ただし、補助金の上限は1回目との差額までとなり、支援は最大2回までです。
事前着手制度の適用範囲を限定
交付決定前に事業に着手できる「事前着手承認制度」については、対象となる枠が限定されました。
- 最低賃金枠
- 物価高騰対策・回復再生応援枠
- サプライチェーン強靱化枠
また、適用期間も予算成立日である2022年12月2日以降に変更されており、過去の日付での着手には対応していません。
申請手続きと今後の公募見通し
申請は電子システム(jGrants)を通じて行い、GビズIDプライムアカウントの取得が必須です。加えて、申請前には事務局が実施する説明会への参加も必要とされています。
なお、第10回の公募受付は2023年6月に終了し、採択結果は2023年9月頃に発表されました。補助金事業は年度内に複数回の公募が予定されており、継続的な情報収集が重要です。
まとめとして活用のポイント
第10回の事業再構築補助金は、従来の枠組みを大きく見直し、成長分野・環境分野・地域産業保全などに重点を置いた構成となりました。売上減少要件の撤廃や新たな支援枠の登場により、より多様な事業者に門戸が開かれています。
今後の公募では、これらの新枠を活用して、自社の強みや経営課題に対応する柔軟な申請が期待されます。制度の特徴を把握し、適切な枠の選定と事業計画の策定を進めることが、採択への第一歩となるでしょう。

