中小企業省力化投資補助金の制度改正と申請ポイント【2025年度版】

2025年度から、中小企業の設備投資を支援する「中小企業省力化投資補助金」が制度改正され、より柔軟な設備導入が可能になりました。特に新設された「一般型」では、企業ごとの業務に最適化されたオーダーメイド型の投資が対象となり、補助額は最大1億円まで引き上げられています。

本記事では、制度の概要から補助対象経費、申請スケジュール、カタログ型との違いまで、わかりやすく整理して解説します。

中小企業省力化投資補助金の新制度概要

省力化支援の目的と制度の背景

中小企業省力化投資補助金は、人手不足が慢性化している中小企業に対し、業務効率化や自動化を目的とした設備投資を支援するための制度です。2025年度の制度では、従来の「カタログ注文型」に加え、より現場のニーズに応じた「一般型」が新設され、設備投資の自由度と支援の幅が大きく広がりました。

この補助金は、「事業再構築補助金」の基金を活用して実施され、予算規模は3,000億円と大規模です。企業の規模や取り組みによって、補助率や上限額が変動する仕組みとなっています。

一般型はオーダーメイドの省力化投資が可能に

各企業の課題に対応できる柔軟な支援

「一般型」は、企業ごとに異なる業務フローや課題に対応できる点が大きな特徴です。導入できる設備は、ロボット、AI、IoTシステム、生産ラインの自動化装置など、幅広い領域が対象となります。

企業が自社の課題を分析し、独自の解決策として構築した設備投資計画が評価されるため、汎用的な製品では対応しにくいケースでも申請可能です。

補助率と補助上限額の詳細

補助率は通常1/2、小規模事業者や再生事業者には2/3が適用されます。加えて、大幅な賃上げを実施する企業や、最低賃金の引き上げに取り組む企業には、補助上限額が加算されるほか、補助率の優遇も受けられます。

従業員数上限額(通常)上限額(賃上げ実施時)
5人以下750万円1,000万円
6~20人1,500万円2,000万円
21~50人3,000万円4,000万円
51~100人5,000万円6,500万円
101人以上8,000万円1億円

※補助額のうち、1,500万円までは上記の補助率が適用されますが、それを超える部分は補助率1/3となります。

補助金申請のための基本要件と注意点

生産性向上と賃上げへの取組が前提

補助金を受けるには、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 年平均で労働生産性が4%以上向上する見込み
  • 給与支給総額が一定の基準を超える増加傾向にあること
  • 事業所内最低賃金が地域最低賃金を30円以上上回る水準
  • 従業員21名以上の企業は行動計画の公表も必要

要件未達時には補助金返還の可能性も

要件を満たせなかった場合、補助金の返還が求められることがあります。とくに給与支給総額や最低賃金水準が基準に達していない場合は、返還義務が発生します。ただし、赤字決算や災害などの特例が認められるケースもあります。

投資計画と補助対象経費の範囲

設備投資は税抜50万円以上が必須

補助金を申請するには、設備投資が必要であり、そのうち少なくとも一つは税抜50万円以上である必要があります。

対象となる主な経費項目

  • 機械装置・システム構築費
    機器や工具、専用ソフトウェアの購入・構築にかかる費用が含まれます。
  • 運搬費・外注費・専門家経費
    機器の設置に伴う運搬料や、外部の専門家への委託費も補助対象です。
  • クラウド利用費・知的財産関連経費
    業務効率化のためのクラウドサービスや、特許取得に関する費用も補助可能です。

なお、機械装置以外の経費は最大で500万円(税抜)までが補助対象となります。

2025年度の申請スケジュールと準備事項

第1回の受付はすでに終了

第1回目の受付は、2025年3月19日から31日まで行われ、採択結果は6月中旬に発表予定となっています。今後も年内に3~4回程度の募集が予定されていますので、次回の公募に備えて準備を進めることが重要です。

申請に必要な主な書類一覧

  • 役員名簿・株主名簿・労働者名簿
  • 金融機関確認書
  • 事業計画書(数種の様式あり)
  • 最低賃金・賃上げ要件の確認書類

公式ウェブサイトから様式をダウンロードし、事前に整えておくとスムーズです。

カタログ注文型は簡易で導入しやすい支援策

選定された省力化製品から導入可能

「カタログ注文型」は、あらかじめ選定された清掃ロボットや無人搬送車、自動券売機などの省力化製品を導入する簡易型の制度です。自社に特化した設備導入はできませんが、導入の手続きがシンプルで、即効性があります。

カタログ型の補助内容

従業員数上限額(通常)上限額(賃上げ実施時)補助率
5人以下200万円300万円1/2
6~20人500万円750万円1/2
21人以上1,000万円1,500万円1/2

2025年2月末からは、販売事業者の登録要件が緩和され、より多くの業者が登録可能になりました。また、補助金額も販売実績ベースでの設定に変更されるなど、制度面でも柔軟性が高まっています。

自社の課題に合わせた投資計画が成功の鍵

2025年度の中小企業省力化投資補助金は、支援内容の幅が広がり、より多様な事業者が活用できる制度となりました。特に、独自性の高い設備導入が可能となる「一般型」の創設により、中小企業の現場に即した省力化投資が現実のものとなっています。

補助金を活用するには、まず自社が抱える業務上の課題を明確にし、その解決に必要な設備投資を戦略的に計画することが不可欠です。正確な書類作成と、要件の丁寧な確認が、補助金獲得の成否を分けるポイントとなります。

次回の公募に向けて、今のうちから準備を進め、チャンスを逃さず自社の成長に繋げましょう。