中小企業の経営を圧迫する原油価格や物価高騰。これに対応するための支援策として「事業再構築補助金・原油価格・物価高騰等緊急対策枠」が設けられています。
本記事では、この補助金制度の概要、申請要件、補助対象経費、補助額、申請時の注意点などについて詳しく解説します。
事業再構築補助金の基本的な仕組みと目的
経済変動に柔軟に対応する制度
事業再構築補助金は、急激な経済環境の変化に直面した中小企業や中堅企業が、既存の事業形態から脱却し、新たな分野へ進出することを支援する制度です。
主にコロナ禍や世界的な原材料価格の高騰によって大きな影響を受けた企業が対象となり、業態転換や新事業の展開に必要な投資に対して、補助金が交付されます。
緊急対策枠の特徴と他枠との違い
特定の経済的ショックに対応した特別枠
「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」は、2022年から新設された特別枠で、従来の補助金制度と異なり、原油や物価の高騰によって事業継続が難しくなった企業を対象としています。これは新型コロナウイルスの影響に加え、国際情勢によるコスト増加が経営を直撃している状況を踏まえた特別措置です。
補助金の内容自体は通常枠に準じていますが、緊急対策要件という独自の条件を満たす必要があります。
原油価格高騰等緊急対策枠の申請要件
補助金を受けるための4つの条件
この枠で申請を行うためには、次の4つの要件を全て満たしている必要があります。
1. 事業再構築要件
国が定める「事業再構築指針」に適合しており、新分野展開や業種転換など、既存のビジネスモデルからの転換が含まれていることが必要です。
2. 緊急対策要件
- 2022年1月以降の売上高または付加価値額が、2019〜2021年同月比でそれぞれ10%以上(付加価値額の場合15%以上)減少していること。
- 原油価格や物価高騰による経営影響が明確であること。
- 新型コロナウイルスの影響を受けていることを電子申請時に申告する必要があります。
3. 認定支援機関との連携
補助対象となる事業計画は、認定経営革新等支援機関との共同策定が求められます。補助額が3,000万円を超える場合、金融機関も関与する必要があります。
4. 付加価値額の向上計画
補助事業終了後3〜5年以内に、年率平均3.0%以上の付加価値額の増加、もしくは従業員一人当たり付加価値額の同率以上の成長が見込める事業計画が求められます。
補助対象となる経費と注意点
支援対象となる費用の詳細
補助対象となる経費は、明確に事業再構築に関係するものに限定されています。以下のような費用が含まれます。
建物費
- 建物の建築や改修費用
- 借用物件の原状回復や一時的な移転にかかる費用
機械装置・システム構築費
- 専用設備やソフトウェアの購入・リース費用
- クラウドサービス利用料や運搬費用も対象となる場合があります
技術導入費・知的財産権等
- 技術導入や特許取得などにかかる費用
広告宣伝費・販売促進費
- 広告の作成、媒体掲載、展示会出展費用などが含まれます
研修費
- 新事業に必要なスキル習得のための教育・講座受講費用
対象外経費の例と注意点
以下のような費用は補助対象外となるため、申請時には注意が必要です。
- 従業員の人件費や旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両の購入費
- 汎用性の高いパソコンやスマートフォンなど
- 原材料費や水道光熱費、通信費などのランニングコスト
従業員数に応じた補助額と補助率の違い
支給される補助金の上限額
従業員の規模により、補助額と補助率が異なります。以下に概要を示します。
| 従業員数 | 補助金額 | 補助率(中小企業) |
|---|---|---|
| 5人以下 | 100万円〜1,000万円 | 最大3/4(上限超過部分は2/3) |
| 6〜20人 | 100万円〜2,000万円 | 同上 |
| 21〜50人 | 100万円〜3,000万円 | 同上 |
| 51人以上 | 100万円〜4,000万円 | 同上 |
中堅企業の場合、上限を超える部分に対しては補助率が1/2となる場合があります。
申請にあたっての注意点と実施スケジュール
申請時に気をつけたいポイント
- 過去に同じ事業で交付決定を受けている場合、同じ事業内容での再申請は不可。
- 他の法人や事業者と酷似した内容の申請は、採択取消のリスクがあります。
- 申請は「jGrants」を通じた電子申請のみで、GビズIDプライムアカウントが必須です。
- 事業着手は交付決定後が原則ですが、「事前着手承認制度」を活用することで、事前の契約が可能となる場合もあります。
- 補助金の支払いは、事業終了後の確定検査を経て実施され、5年間のフォローアップ(年次報告)義務があります。
公募スケジュールの補足
この枠の申請は2022年の第7回公募からスタートしました。該当する公募期間はすでに終了しており、今後の再開や制度の更新がある場合は、公式発表を確認することが重要です。
第7回以降に見直された審査項目のポイント
審査基準に新たな観点が追加
第7回公募から、審査項目が以下のように見直されました。
- 原油価格や物価高騰など、直近の経済環境変化による影響も加味されるように
- ポストコロナ・ウィズコロナ時代を見据えた「感染症等の危機に強い事業」であるかも評価対象に
これにより、社会的要請に即した事業内容かどうかがより重視されるようになっています。
まとめ
「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」は、ただの資金補助ではなく、企業が大きな環境変化に対応し、持続可能な事業モデルへと転換していくための強力な後押しとなります。新規事業への挑戦や業態転換を計画している企業にとって、必要な資金の確保が最大の課題となりますが、この制度の活用により、そのハードルを大きく下げることが可能になります。
経営課題を抱える中小企業は、自社の状況に合致するかを確認した上で、積極的な活用を検討してみる価値があると言えるでしょう。

