中小企業や中堅企業による国内生産の強化を後押しする新たな支援制度として、「サプライチェーン強靱化枠」が事業再構築補助金に新設されました。本制度では、最大5億円の補助が受けられ、建物の建設費や機械装置の導入費などが対象となります。
申請には複数の条件を満たす必要があり、計画的な準備と正確な情報の提出が求められます。本記事では、補助金の概要、対象経費、申請要件、スケジュールなどを整理して解説します。
サプライチェーン強靱化枠の新設による支援の背景
この補助制度は、海外依存を見直し、国内での生産体制を再構築しようとする企業を対象に設計されています。世界情勢の不安定化や物価高騰といった外部環境の影響が長期化する中、製造業における安定的な供給網の確立が急務となっており、それを支援するのが「サプライチェーン強靱化枠」です。
事業再構築補助金の第10回公募から新たに設けられたこの枠は、企業の大規模な設備投資に対する補助が受けられる点で、従来の支援枠と大きく異なります。
最大5億円の補助が可能な補助金額と補助率の詳細
中小企業と中堅企業で異なる補助率に注意
補助金額は1,000万円から最大5億円までとされ、対象事業の規模によって大きな支援が受けられる点が特徴です。補助率は以下のように事業者の区分によって異なります。
- 中小企業者等:補助率 1/2
- 中堅企業等:補助率 1/3
対象となる経費や投資額に応じて支援金額が変動しますが、事業計画の内容や要件の達成度によっては、申請しても満額支給とならない場合もあるため注意が必要です。
補助対象となる経費は建物と機械装置が中心
建物費は生産拠点整備のための支出が対象
補助対象となる建物費には、以下のような費用が含まれます。
- 工場や生産設備などの建設費
- 既存施設の改修工事費
新規拠点の立ち上げや生産体制の再編といった構造改革を伴う事業に対し、積極的に支援されます。
機械装置やシステム構築費は導入が必須
この枠では、機械装置の導入が必須要件とされています。対象となる経費は以下のとおりです。
- 機械や工具、器具の購入費
- ソフトウェアや情報システムの導入費
- それらと一体で行う据付け、修繕、運搬などの費用
また、リース会社との共同申請が可能で、リース方式で機械等を導入する場合にも補助が受けられます。
対象となる事業者の条件は製造業が基本
本社所在地と事業分野に明確な基準あり
補助の対象は、日本国内に本社を有する中小企業または中堅企業であり、製造業に該当することが必須です。ただし、過去に不正受給などで補助金停止措置を受けている企業は対象外となります。
リース会社との共同申請を行う場合、リース会社が中小企業でなくても申請自体は可能ですが、その場合にはリース料の減額などの条件を満たす必要があります。
補助対象となる事業の内容と求められる基準
再構築内容と業種の将来性が重要な判断材料に
補助の対象となる事業は、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 「事業再構築(国内回帰)」に該当する取り組みである
- 所定の確認を受けた計画書を作成している
- 3~5年で付加価値額または従業員1人当たり付加価値額を年平均5%以上増加させる見込みがある
- 国内生産に関する取引先からの要請がある
- 市場規模が過去または今後10年間で10%以上拡大する業種である
- DX推進自己診断を行い、結果を提出している
- 設備投資を行う事業場の最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い
- 給与支給総額が3~5年で年平均2%以上増加する計画である
- 「パートナーシップ構築宣言」を公表している
すでに事業再構築補助金を受けたことがある企業は、異なる事業内容であることと既存事業と新事業の両立が可能であることも求められます。
補助事業の実施期間と事前着手の特例について
補助対象事業の実施期間は、交付決定日から28か月以内とされています。ただし、採択発表日から30か月後の日までが最終期限となっており、これは全体スケジュールの上限を示すものです。
また、特例として令和4年12月2日以降に開始された事業については、交付決定前でも補助対象となる場合があります。その場合には、事務局への「事前着手届」の提出と承認が必要です。
電子申請の流れと必要な準備について
GビズIDの取得は申請前に済ませておくことが必須
申請は、国の電子申請システム「jGrants」でのみ受け付けられます。申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要で、発行には通常1週間程度かかります。
申請手続きの一般的な流れ
- 公募開始(※第10回公募は2023年3月30日に開始され、6月30日に終了)
- GビズID取得と事前準備
- 電子申請の提出
- 採択通知の受領
- 交付申請と事業開始
- 実施期間終了後に成果の確認
- 補助金の請求および受領
- 事業化状況の報告
事業計画作成時に意識すべきポイント
補助金審査の鍵は計画書の説得力にある
事業計画書では、次の点に具体的な内容を記載することが求められます。
- 補助事業の内容、必要性、既存事業との差異
- 国内回帰による波及効果や地域への貢献
- 想定ユーザーや市場規模、収益化の見通し
- 設備投資内容とその取得予定価格
- 収益計画と付加価値額の算出根拠
- 実施体制やスケジュール、資金調達の見通し
提出が必要な書類と内容の確認事項
提出書類には、事業計画のほか財務状況や補助要件に関する証明書類が多数含まれます。代表的なものは以下のとおりです。
- 認定支援機関または金融機関の確認書
- 決算書や確定申告書の控え
- 市場拡大や賃上げに関する説明資料
- 事業場内最低賃金の証明
- 連携事業者がいる場合の役割分担資料
不備があると申請が受理されないため、事前に電子申請マニュアルを熟読し、書類の名称や添付形式に誤りがないか入念に確認する必要があります。
今後の募集に備えて早めの準備を進めておく
第10回公募はすでに終了していますが、今後の公募に向けて同様の枠が継続または再設計される可能性があります。制度の動向を注視しつつ、事業再構築に向けた準備を早めに進めることが、スムーズな申請と採択につながります。
新制度に対応した補助金を活用することで、企業はより強固なサプライチェーンを構築し、将来の成長戦略を実現しやすくなります。国内回帰や生産体制の再編を検討している企業にとって、見逃せない支援制度と言えるでしょう。

