2025年度のものづくり補助金は、中小企業の生産性向上と賃上げ促進を支援するため、制度内容が大幅に見直されました。補助上限額は4000万円となり、支援枠が2つに整理。さらに収益納付義務の撤廃や、最低賃金引上げ特例による補助率引き上げなど、企業にとってより利用しやすい制度へと進化しています。
本記事では、変更点を中心に、申請に向けて押さえるべきポイントを解説します。
ものづくり補助金とは何かを整理する
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上や新たな事業展開を目指すための設備投資を支援する制度です。長年にわたり、中小企業支援策の柱となっています。
2025年度も継続が決定しており、主な支援枠は次の2種類に整理されました。
- 製品・サービス高付加価値化枠:新製品・新サービスの開発に関する取り組みを支援
- グローバル枠:海外市場開拓や輸出促進を目的とした取り組みを支援
2024年度まで存在していた「省力化(オーダーメイド)枠」は廃止され、他の補助事業へ移行される見込みです。
2025年度ものづくり補助金の主な変更点を詳しく紹介
支援枠と補助対象事業の整理が進む
これまで3つあった支援枠は、2025年度から2つに集約され、対象となる事業が絞られました。これにより、補助対象がより明確になり、資源を集中投下する形になっています。
製品・サービスの高付加価値化や、海外展開など、明確な成長戦略を持つ企業が対象になりやすい構成です。
基本要件の見直しで賃上げ努力を重視
給与支給総額に関する要件も見直されました。これまでよりも賃上げへの取り組みが強く求められる内容です。
【変更後の要件】
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、最低賃金の年平均成長率以上
- または、給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上
さらに、従業員21名以上の企業は「一般事業主行動計画」を公表する義務も追加されています。
ものづくり補助金2025年度版の補助上限と補助率
2025年度の補助金額や補助率は以下の通り設定されています。
製品・サービス高付加価値化枠の補助内容
- 補助上限:750万円~2500万円
- 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者や再生事業者は2/3
グローバル枠の補助内容
- 補助上限:3000万円
- 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3
また、大幅な賃上げに取り組む企業には、補助上限額が最大で1000万円上乗せされる特例も用意されています。これは給与支給総額の年平均成長率が+6.0%以上の場合に適用されます。
最低賃金引上げ特例で補助率が引き上げられる仕組み
2025年度から新たに設けられた「最低賃金引上げ特例」は、賃上げを積極的に行う企業を後押しする仕組みです。
特例適用のための要件とは
- 指定された期間中、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全従業員の30%以上を占めていること
この要件を満たすと、通常よりも高い補助率(2/3)が適用され、支援額が拡大します。ただし小規模・再生事業者を除きます。
収益納付義務の撤廃で事業成果を自由に活用できる
これまでのものづくり補助金では、補助金を活用した事業成果から得られた収益に対して納付義務が課されていました。しかし、2025年度からはこの義務が廃止されます。
これにより、補助金を活用した事業成果をより自由に企業の成長戦略へ組み込めるようになり、資金繰りや再投資の柔軟性が大幅に向上します。企業にとって非常に大きなプラス材料といえるでしょう。
ものづくり補助金の補助対象経費を確認する
補助対象となる経費は多岐にわたりますが、特に注意したいのは「機械装置・システム構築費」が必須項目となっている点です。
主な補助対象経費は以下のとおりです。
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 海外旅費
- 通訳・翻訳費
- 広告宣伝・販売促進費
グローバル枠では、さらに知的財産権関連経費も対象に含まれます。
申請スケジュールと注意点
申請から補助金交付までには一定の手順を踏む必要があります。特にスケジュール管理が重要です。
2025年の申請スケジュールは次の通りでした。
- 第19次公募締切:2025年4月25日
- 第20次公募締切:2025年7月25日
※この記事公開時点で第19次の申請は締切済み、第20次締切も間近となっています。申請を検討している方は急ぎ準備が必要です。
交付申請は採択決定から2か月以内に行わなければならず、また実施スケジュールに遅れがある場合、取り消しのリスクもあります。事業計画通りに進める体制づくりが求められます。
まとめ
2025年度のものづくり補助金は、中小企業の生産性向上と賃上げの両立を支援する制度として大きく変革されました。
補助上限額は4000万円となり、支援枠は2つに整理されています。また最低賃金引上げ特例の導入により、賃上げに積極的な企業への支援が強化されました。特に収益納付義務の撤廃は、企業の自由度を高め、より効果的な事業展開を可能にすることが期待されます。
今後も、ものづくり補助金は、中小企業の多様な成長戦略をサポートする制度となりそうです。上手に活用して、将来的な成長に役立てていきましょう。