産業雇用安定助成金の新設コースで中小企業の人材確保を後押し

令和5年度の補正予算により、産業雇用安定助成金に「産業連携人材確保等支援コース(仮称)」が新たに創設されました。この制度は、生産性向上や事業再構築を目指す企業が専門性の高い人材を確保しやすくすることを目的としたものです。

既存の補助金制度と連携する形で設計されており、特定の条件を満たした中小企業などに対して最大250万円が助成されます。本記事では、制度の概要、対象企業の要件、助成金の内容と申請の流れをわかりやすく解説します。

産業雇用安定助成金に新たな支援コースが誕生

企業の人材戦略を後押しする新制度の狙い

産業雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の雇用維持を支援する目的で、2021年に創設された制度です。社会や経済の変化に対応する中で、この制度はたびたび見直され、令和5年4月には「事業再構築支援コース」が追加され、同年10月には「雇用維持支援コース」が廃止されるなどの変更が行われました。

今回新たに設けられた「産業連携人材確保等支援コース」は、労働市場の構造的な変化に対応するための支援策であり、生産性向上を目指す企業が必要とする専門人材の採用を後押しするものです。人材不足が深刻化する中小企業にとって、大きな助けとなる制度です。

中小企業や地方企業が対象となる支援の内容

他の補助金との併用が前提となる制度設計

この新設コースは、既存の補助金との連携を前提とした制度です。対象となる企業は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 経済的要因により一時的に事業を縮小した中小企業などの事業主
  • 生産性向上に資するスキルを持つ新たな人材を常時雇用として採用する事業主
  • 「事業再構築補助金」または「ものづくり補助金」に採択され、交付決定を受けていること

この要件は、中小企業が戦略的に事業の再構築や転換を行う中で、必要な人材を確保することを目的としています。

事業再構築補助金での採択が要件のひとつ

変化に強い企業への転換を支援する補助制度

事業再構築補助金は、ポストコロナ時代に対応するために中小企業が事業転換や業態変更を行う際の支援制度です。たとえば新たな製品開発や別業種への進出なども対象に含まれます。

採択の主な条件

  • 認定経営革新等支援機関または金融機関の支援を受けた事業計画の提出
  • 補助事業終了後3〜5年で、付加価値額または従業員1人あたり付加価値額を年平均3〜5%以上向上させること

この制度を活用することで、新たな事業展開に必要な体制強化が図られ、今回の助成金とも連動して人材確保が可能となります。

ものづくり補助金との併用で支援が拡大

設備投資や業務効率化にもつながる制度

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)は、中小企業が行う生産性向上に関する取り組みを支援する制度です。革新的な技術開発やサービス改善に必要な設備投資などが主な対象です。

主な要件には次のようなものがあります

  • 給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加
  • 地域別最低賃金+30円以上の水準での給与支払い
  • 事業全体の付加価値額の年率平均3%以上の増加

令和5年時点では第17次締切分の公募が準備中とされていましたが、現在では受付が終了している可能性があるため、最新の公募情報を確認のうえ申請を検討する必要があります。

産業連携人材確保等支援コースの具体的内容

対象となる人材と雇用条件

助成の対象となる人材は、「生産性向上等に必要なスキルを有する年収350万円以上の者」とされています。この条件に合致する人材を新たに常時雇用として採用した場合に、助成金の対象となります。

助成額の詳細と支給スケジュール

  • 中小企業:最大250万円(6か月ごとに125万円ずつ、2期に分けて支給)
  • 中小企業以外:最大180万円(6か月ごとに90万円ずつ、2期に分けて支給)

助成金の申請から受給までの流れ

スムーズな申請のための手順確認

  1. 補助金応募書類の提出
  2. 審査委員会による採択
  3. 補助金の交付申請と決定
  4. 対象人材の雇用(補助事業期間内に実施)
  5. 雇用開始から6か月および12か月後に労働局またはハローワークへ支給申請
  6. 助成金の受給

申請タイミングや書類の準備が助成金の受給可否に直結するため、スケジュール管理と事前準備が重要です。

働き方の変化と人材確保の必要性

働き方の多様化が採用戦略に影響

総務省の調査によれば、有業者数や正規雇用の割合は増加傾向にあり、育児や介護と両立する就業者、テレワーク経験者も年々増加しています。特に25〜34歳の層でテレワークの実施率が高く、柔軟な働き方を求める人材が増加しています。

このような社会的変化を踏まえたうえで、企業は雇用環境の整備と働き方改革を進める必要があります。助成制度を通じて優秀な人材の獲得と定着を促進することが、企業競争力の向上にもつながります。

まとめ

回復の兆しが見えてきたとはいえ、世界経済は未だ多くの不安要素を抱えています。しかし変化する時代の動きに対処するには、すでに動き出す必要があります。

産業雇用安定助成金に「産業連携人材確保等支援コース」では、他の補助金の交付に加え、最大250万円が助成されます。要件も少なく、比較的容易に取得できる助成金です。

この機会に産業雇用安定助成金に「産業連携人材確保等支援コース」を上手に活用し、時代の変化を乗り切りましょう。