中小企業新事業進出補助金とは?成長・事業転換を支援する新制度

中小企業や小規模事業者が成長や事業拡大を目指す際に活用できる「中小企業新事業進出補助金」について解説します。新たな市場や高付加価値分野への進出を支援するこの制度は、補助対象要件や賃上げ義務などが細かく定められているため、活用する際には十分な準備が必要です。

中小企業新事業進出補助金の概要

近年、中小企業や小規模事業者を取り巻く経営環境は、物価高騰、人手不足、最低賃金引き上げなどにより厳しさを増しています。こうした状況に対応するため、現状維持ではなく新たな事業展開や構造転換が求められています。

「中小企業新事業進出補助金」は、このような挑戦を後押しするため、投資資金の一部を支援する制度です。既存の基金を活用し、予算規模は約1,500億円とされています。

支援内容と活用シーン

この補助金は、新たな事業への進出や、既存事業とは異なる分野への展開を目指す中小企業等を対象に、設備投資などにかかる費用の一部を補助するものです。

対象となるのは、単なる設備更新や既存事業の延長ではなく、新市場開拓や高付加価値事業への本格的なチャレンジです。

中小企業新事業進出補助金の要件と補助対象経費

基本要件

補助を受けるためには、以下の要件を満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。

  • 新事業進出要件:定義に沿った新規事業であること。
  • 付加価値額要件:年平均4.0%以上の付加価値額成長見込み。
  • 賃上げ要件:給与支給総額の年平均成長率2.5%以上、または最低賃金の成長率以上の増加。
  • 事業場内最賃水準要件:地域別最低賃金より30円以上高い水準の維持。
  • ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画の公表。
  • 金融機関要件:資金提供元の金融機関から事業計画確認を受ける場合がある。

賃上げ特例の要件

特例を適用する場合、以下の条件を補助事業実施期間中に満たす必要があります。

  • 年平均6.0%以上の給与支給総額増加
  • 事業場内最低賃金の年額50円以上引き上げ

補助対象経費

補助対象となる主な経費は以下の通りです。

  • 機械装置・システム構築費
  • 建物費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 広告宣伝・販売促進費

補助金額・補助率

補助金額と補助率は、従業員数に応じて以下の通り設定されています。

従業員数補助額(通常)賃上げ特例適用時
20人以下750万~2,500万円最大3,000万円
21~50人750万~4,000万円最大5,000万円
51~100人750万~5,500万円最大7,000万円
101人以上750万~7,000万円最大9,000万円

補助率は中小企業等で1/2以下です。

補助対象となる事業者

対象となるのは、日本国内に本社と補助事業実施場所を持つ以下の事業者です。

中小企業者

資本金または従業員数が一定以下の法人または個人事業主です。業種によって基準が異なり、例えば製造業・建設業・運輸業では資本金3億円以下、常勤従業員数300人以下と定められています。

中小企業者等に含まれるその他の法人

  • 企業組合、協業組合
  • 一般社団法人、一般財団法人
  • 農事組合法人
  • 労働者協同組合
  • 公益法人等

特定事業者

特定条件を満たす生活衛生同業組合や酒造・酒販組合、内航海運組合、技術研究組合なども対象となります。

リース会社

中小企業等がリース料から補助金相当分を減額できる条件下では、リース会社との共同申請も可能です。

申請スケジュール

令和7(2025)年4月から公募要領が公開され、2027年3月までに4回程度の公募が予定されています。初回のスケジュールは以下の通りです。

  • 公募開始:2025年4月22日
  • 申請受付開始:2025年6月頃
  • 応募締切:2025年7月10日18:00
  • 採択発表:2025年10月頃

申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得と、「一般事業主行動計画」の策定・公表が必須です。手続きには1~2週間程度かかるため、早めの準備が重要です。

まとめ

「中小企業新事業進出補助金」は、成長を目指す中小企業や小規模事業者にとって、新たな事業展開や構造転換を進めるための有力な支援制度です。

申請にあたっては、給与支給総額の増加や事業場内最低賃金の引き上げといった賃上げ要件を満たすことが求められます。

新商品や新サービスの開発を検討している事業者は、制度の詳細をよく確認し、自社の成長戦略に合わせた活用を検討していきましょう。